借金回避!相続放棄と遺産分割放棄の法的効力と手続き
1. 負債相続リスク回避の基本知識:二つの「放棄」の決定的な違い
相続が発生した際、被相続人に借金など負債がある場合、その負債を回避するために「放棄」という言葉が使われます。
しかし、法律上は効力の異なる二つの「放棄」が存在します。この違いを理解することが、借金回避の第一歩です。
①法的効力を持つ「相続放棄」とは?
私たちが負債回避のために必須となるのが、家庭裁判所で行う「相続放棄」です。(家庭裁判所のHPはこちら)
💡相続人としての地位を初めから失う
相続放棄が家庭裁判所に受理されると、その人は初めから相続人ではなかったものとして扱われます。
これは、単に財産の受け取りを拒否するだけでなく、相続人としての権利と義務の全てを放棄することを意味します。
💡資産と負債の全てを承継しない
相続放棄を選択した場合、預貯金や不動産といったプラスの財産も、借金やローンといったマイナスの財産も、一切引き継ぎません。
負債だけを免れて資産だけを受け取るという都合の良い選択は法的に不可能になります。
②一般に言う「遺産分割協議での放棄」の真実
相続人間での話し合い(遺産分割協議)の際に、「私の取り分はいらない」と主張することも「放棄」と呼ばれることがありますが、これは法的な相続放棄とは全く性質が異なります。
一般で言う「遺産放棄(財産放棄)」の真実:負債は残る可能性アリ!
👉ポイント
一般の方が勘違いしやすい例でお伝えします。
🧓:「〇さん、あなた遺産放棄して。放棄の書類に名前とハンコ押して」
👩🦰:「わかりました。(名前書いて、ハンコ押したから、これで放棄できた!私は、一切かかわりないんだな。これで安心だ。」
※これが、実は違うのです。
💡 効力は財産の分配に限定される
遺産分割協議での放棄は、あくまでプラスの財産(遺産)に関する合意に過ぎません。
その結果、その人は遺産である不動産や預貯金を受け取らなくなります。
💡 負債はそのまま残るというリスク
遺産分割協議で財産を放棄したとしても、その人は相続人としての地位を失いません。
借金などの負債は、遺産分割の対象ではなく、相続発生と同時に法定相続分に応じて相続人全員に自動的に承継されます。そのため、この方法では負債を免れることはできません。

2. 借金回避のために必須!相続放棄の厳格な手続きと期限
【重要】
負債回避を目指す場合、必ず家庭裁判所を通じた相続放棄の手続きを踏む必要があります。
①厳守すべき「3ヶ月の熟慮期間」
相続放棄には、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」という厳格な期限が定められています。
💡期限超過の重大なリスク
この3ヶ月の熟慮期間を過ぎてしまうと、原則として相続をすべて承認した「単純承認」とみなされ、後から負債が発覚しても、その負債を背負わなければならなくなります。この期限管理こそが、初期対応で最も重要となります。
②相続放棄の手続きの全体像
相続放棄の手続きは、次のステップで進められます。
- ステップ1: 負債を含む相続財産の調査と、相続人全員の確定。
- ステップ2: 3ヶ月以内に家庭裁判所へ「相続放棄の申述書」を提出。
- ステップ3: 家庭裁判所からの照会書(質問書)への回答。
- ステップ4: 家庭裁判所による「相続放棄申述受理通知書」の交付。
③ 次順位の相続人への影響
相続放棄が受理されると、その人は初めから相続人ではなかったことになるため、相続権が次の順位の相続人(例:子→親、親→兄弟姉妹)へと移ります。負債回避のためには、次順位の相続人にも同様の相続放棄が必要となる可能性があることを理解しておき、自分が相続放棄した時には、次順位の相続人にも伝えてあげると親切でしょう。

3. 見落としがちな負債の種類と具体的な調査方法
相続放棄の判断をするためには、被相続人のプラスの財産だけでなく、マイナスの財産、すなわち負債の全容を漏れなく把握することが不可欠です。
目に見えにくい負債を徹底的に調査する方法を解説します。
①主な負債の種類と調査すべき対象
負債は、銀行からの借入金など明確なものだけでなく、日常生活に潜むものもあります。
💡金融機関からの借入金やローン
- 調査方法: 被相続人の自宅に届いた郵便物(請求書、督促状、返済予定表など)の確認。
主要銀行、信用金庫、消費者金融からの取引履歴の有無を照会します。 - 注意点: 住宅ローンや自動車ローンは、通常、団体信用生命保険に加入しているため、被相続人の死亡により保険で完済されることが多く、実質的な負債とならない場合があります。保険の加入状況を確認することが重要です。
💡保証債務(連帯保証人)
- 調査方法: 被相続人が他人の借入に対して保証人になっていた場合、その債務も相続の対象となります。
保証契約書や、知人・親族との金銭貸借の契約書がないか、徹底的に探し出す必要があります。 - リスク: 主債務者が返済不能になった場合、相続人が代わりに全額を返済する義務を負います。
💡未払いの費用や税金
- 調査方法: クレジットカードの未払い残高、医療費の未払金、アパートや駐車場の未払い賃料、そして税金(住民税、固定資産税など)の滞納分がないか、請求書や過去の支払い履歴を確認します。
- 注意点: 税金の滞納も負債として相続され、延滞税なども含めて支払い義務が発生します。
②負債調査における行政書士の役割
行政書士は、相続人からのヒアリングや自宅にある書類の確認を基に、これらの負債が漏れなく財産目録に計上されるよう支援します。
💡 調査対象のリストアップと書類整理
被相続人が取引していた可能性のある金融機関や、負債の種類(ローン、保証、未払金など)をリストアップし、必要な書類を整理することで、負債調査の抜け漏れを防ぎます。
💡財産目録への正確な反映
調査の結果判明した全ての負債について、債権者名、残高、契約内容を正確に財産目録へ反映させます。この目録が、相続放棄を行うかどうかの最終的な判断材料となります。

4. 相続手続きの複雑な「初動」を乗り越える行政書士の役割
相続放棄の期限である3ヶ月を見据えた「初動」は、時間との戦いであり、専門的な書類整備が求められます。行政書士は、裁判所の手続きを直接代理することはできませんが、この初動を確実にするための重要な役割を担います。
①厳格な期限の管理と全体手続きのナビゲート
相続放棄の「3ヶ月以内」という期限は、ご相談者様ご自身で厳守すべきものですが、行政書士は、この重要な期間に関する情報整理と、お客様ご自身が適切な判断を下すための全体像の把握を支援します。
②公的書類の収集と正確な財産調査のサポート
相続人を確定し、財産と負債の全容を把握するために必要な、煩雑な書類収集を支援します。
💡戸籍謄本などの収集代行
相続人の確定に必要な、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本など、複数の市区町村役場への請求が必要となる公的書類の収集を代行・支援します。
💡財産目録の正確な作成支援
負債情報を含む全ての財産を一覧にした財産目録の作成を支援します。この目録は、相続放棄の判断、および後の家庭裁判所への申述の際の基礎資料となります。
③複雑な相続手続きを円滑化する重要資料の作成
後の手続きをスムーズに進めるために、公的機関へ提出できる質の高い文書を作成します。
💡 相続関係説明図の作成など
戸籍謄本を基に、相続関係を視覚的に整理した図を作成し、金融機関や法務局での手続きの円滑化を図ります。

5. 【まとめ】負債の相続リスクを回避するために今すぐ動くべき理由
負債の相続リスクを回避するために、最も重要なのは「3ヶ月の期限」を厳守し、正確な情報に基づいて「相続放棄」の手続きを進めることです。
「遺産分割協議での放棄」は借金回避には無力であるため、負債の存在が少しでも疑われる場合は、今すぐ専門家に行動を起こすことが、ご自身とご家族を守る確実な方法となります。


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