知っておきたい「法定相続分」の本当の意味:遺言書がない場合の家族間の財産分けの基準
多くの人が勘違いしている「法律で決まった分け方」
相続について考える際、「法定相続分」という言葉をよく耳にします。多くの方は、「遺言書なしの場合、親の財産は法律通りに、この法定相続分で分ける義務がある」と思い込んでいたり、「この割合で自動的に分けられるものだ」と勘違いされていたりします。そのため、「遺言書なしでも、法定相続分があるから、法律通りにすれば揉め事は起きないだろう」と考える方も少なくありません。
しかし、これは大きな誤解です。法定相続分は、民法という法律が家族間の揉め事を防ぐために定めた「目安(基準)」であり、実際に財産を分ける際の「決定ルール」ではありません。この違いを理解することが、円満な相続対策の第一歩となります。
法定相続分は「目安」であり、絶対ルールではない理由
法定相続分とは、民法という法律が定めた、相続人が複数いる場合の財産の分け方の「割合の基準」のことです。例えば、配偶者と子どもがいる場合、配偶者が半分、子ども全員で残りの半分を分ける、といった分け方の基準が細かく決められています。(民法900条)(e-Govサイトへ)
では、なぜこれが絶対的なルールではないのでしょうか?
相続財産は、亡くなった方の家族が受け取るものです。法律は、家族間の話し合い(遺産分割協議)で自由に分け方を決める自由を最優先しています。
そのため、たとえ法定相続分と全く違う分け方を家族全員が合意したとしても、その合意内容(遺産分割協議書)が法律よりも優先され、実行されるのです。
例えば、「長男が全て相続する」「長女が多くもらう」など、家族の事情に合わせて分け方を自由に決めることができます。
このため、遺言書なしの相続でも、法定相続分はあくまで基準であり、家族の合意が優先されることを覚えておく必要があります。

「司令塔」が必要な状況か、客観的にアドバイスいたします。
法定相続分が「力を発揮する」のはどんな時か?
では、この法定相続分という目安が真に力を発揮するのは、以下の二つのケースに限られます。
ケース1:全員の合意が得られなかったとき
家族間の話し合い(遺産分割協議)が進まず、誰がどれだけ財産をもらうかについて、相続人全員の意見がまとまらなかった場合です。
親族間の対立が深刻化し、話し合いでの解決が不可能になってしまうと、外部の機関の力を借りて解決を図ることになります。このような状況で、法定相続分は、親族間の話し合いが破綻した時に、その解決を下すための「最終的な基準」として適用されます。その結果、家族が本来望んでいたような自由な分け方での決着は難しくなり、この基準に従って解決されることになるのです。
ケース2:話し合いが不要な「簡単なケース」
非常に稀ですが、財産がすべて現金で、かつ相続人が全員「法定相続分通りに分けます」と合意している場合など、話し合いが形式的で終わるケースもあります。この場合、法定相続分がそのまま使われますが、これもあくまで家族全員がそれに同意した結果に過ぎません。

なぜ、「法定相続分」があるのに遺言書が必要なのか
法定相続分という分け方の目安があるにもかかわらず、なぜ遺言書が必要なのでしょうか?
それは、遺言書こそが、親御さんの「この分け方が家族にとって一番平和だ」という強い意思表示ができるものだからです。
遺言書があれば、法定相続分を完全に無視しても良いし、「この財産は妻に、この不動産は長男に」と、親の思い通りの配分を指定できます。
これにより、煩雑な遺産分割協議をスキップできるため、残された家族は話し合いの苦労や、感情的な対立を避けることができるのです。
法定相続分は、争いの「解決基準」にはなりますが、争いそのものを「予防」する効果はほとんどありません。争いを防ぎ、親の思いをスムーズに実現する手段こそが、遺言書なのです。

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まとめ
法定相続分は、争いを未然に防いでくれる万能のルールではありません。それは、親族間の話し合いができなかった時に、判断の拠り所となる「基準」であるとご理解ください。
親族間の争いを避け、財産を巡って家族関係が壊れてしまう事態を回避するためには、親御さんが元気なうちに「誰に、何を、どうする」かをきちんと決めておく「遺言書」という準備が不可欠です。
次の記事では、遺言書がないことによって、残されたご家族が実際に直面する具体的な「困りごと」について詳しく解説します。
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